--------------------------------------------------------------マシュー(ここは・・・・どこだ・・・・)体が動かせない。指一つ、目も動かせない。闇の中のようであり、また目もくらむ光の中にもいるようだ。マシュー(俺は・・・どうなった・・・・そうだ・・・メルダの遺体を見て・・・それから・・・)思いをめぐらすマシュー。マシュー(ああ。そうだったな・・・何も考えられなかった。頭の中が真っ白で・・・何か斬られたようでも あったが・・・・そうか・・・俺は死んだのか・・・これであいつの所にいけるな・・・・)ある意味諦観であり、ある意味安息であろう。彼は死を受け入れようとしていた。その時声「おやおや。残念だけどそうは行かないかもしれないねぇ・・・」クスクスと笑うように声は告げる。女の声だ。といっても少女ではない。若い・・・どこか妖艶であり、どこか人をあざ笑うような声。マシュー(だれだ・・・・)声「誰でもかまわないさ。誰でもあり、誰でもない」マシュー(からかっているのか・・・・それにここは・・・ふ・・・どうせ死ぬんだ。あまり意味はないか・・・)声「死んじゃぁいないさ。でも生きてもいない」生でもなく死でもない・・・その奇妙なたとえに思わず聞き返すマシュー。マシュー(なん・・・だと・・?どういうことだ・・・)諭すように。どこか嘲笑うかのような自虐にもにた調子で続ける声。声「僕にとっては時間も空間も意味を持たない。あらゆる場所にいて、同時にいない。 あらゆる時間にいて、同時にいない。そんなたわいもない存在だよ」マシュー(そんな存在が何の用だ・・・さっさと済ませてくれないか・・俺はあいつの元に・・・・)声「ここは僕のちょっとした領域の一つさ。君にちょっとお願いがあってね」マシュー(は。生きてるか死んでいるか分らない奴にお願いだと?)声「このまま元の世界に戻れば君は間違いなく死ぬ。そして最愛の人の下に旅立てるだろうねぇ・・・」マシュー(それでいいじゃないか・・・あいつがいない世界なんて・・どうでもいい)すでに最愛の人はこの世になく、マシューにとっては現世なぞどうでもいいことであった。声「でも、このまま終わらせていいのかい?あの男は憎くないのかい?」マシュー(どの道死ぬんだろう?なにが出来るってんだ・・・)声「僕が力を貸せば君は元の世界で蘇ることも出来る。あの男に復讐することだって出来るんだ・・」挑発的な・・・いや、どこか人を扇動し動かそうとするような声。あからさまに姦計をにおわす声。それでもなお、その問いかけはマシューの心に響いた。マシュー(・・・・どこの誰か分らない奴に手を貸せと?)声「何者かって?あはは。好きに読んでくれればいいよ。無貌の神、暗黒神、燃える三眼、這い寄る混沌。 あるいは、夜に吠ゆるもの。何とでも」マシュー(邪神か・・・どうせこんなとこに出てくるんだ。ロクなもんじゃねぇと思ってたが・・・何をさせたい)声に困ったような・・苦笑する様子が伺える。声「いやぁ召還かかっちゃって。となると顕現しないわけにはいかない。だからといって召還されて言いように されるなんて神の沽券にかかわるからさ」マシュー(それで蘇らせて何処の誰か知らんが馬鹿な召還者を倒せってか。それでこんなとこに呼び出したのか。 結果は知ってるだろ?俺に何ができる)一体何をさせたいのか?いぶかしむような調子で言うマシュー。声「人の身であればね。でも顕現が君だったら?僕と・・・」マシュー(僕と契約して邪神になってよ。とでも言うつもりか?大体召還されてるんだろうが。それに俺が 顕現になってどうする。召還されたのはあんただろうが)そうだ。マシューが顕現するという事はマシューが邪神である事を意味する。であればこの問いかけに何の意味があろうか?だがそんな問いかけに事も無げに言い放つ声。声「問題はないよ。千の無貌とも呼ばれてるんだ。千の顕現の一つが君だったってだけだ」マシュー(・・・・いいだろう。あのクソったれなエルフ共を・・あのクソ茶色なシ・ゲルさえ潰せるなら、 相手が悪魔だろうが邪神だろうがかまうものか。俺の魂ごとくれてやる)声「決まりだね。次に目覚めた時から君は僕の一部。千の無貌の一側面となるんだ・・・・」--------------------------------------------------------------ゆっくりと立ち上がるマシュー。だがその顔は余りに暗い。どこか垢抜けた・・どこか陽気で気さくだった雰囲気は微塵も感じられない。濃い闇を見にまとい。眼光すら鋭いものに変わっている。何があったというのだろうか。すっかり髪の色も抜け落ちて銀髪へと変わり果ててしまっている。ニヤリ。マシューはほくそ笑んだ。そして忽然と姿を消した。--------------------------------------------------------------「うわぁぁぁぁぁっ」「な、何者だ!?」「つ、強い・・・・いったい何者なんだ!?奴は!」「たかが劣等種族がこれほどの・・・」阿鼻叫喚の叫びが木霊する。あのエルフ達に明らかに走る怯えの色。いやこれは・・・怯えというレベルではないだろう。”恐怖”まさに彼らは恐怖を感じていた。眼前に無防備に経つ銀髪の男に。獲物すら持ってはいない。だが、その両手は真っ赤に染まり、血が滴り落ちている。両手・・・そうだ。両手だ。剣や斧といった獲物さえ持ってはいない。見れば足元に何人ものエルフの亡骸が転がっている。怯え、恐怖の目でマシューを見るエルフの生き残り達にマシューは静かに言い放った。マシュー「お祈りでもしろ。きさまたちは生きては返さない。私は生まれてはじめて よろこんで人を殺す・・・」--------------------------------------------------------------Part5に続く